自立とは、多くの人に依存することです。「生きる技法」安冨歩氏
「自立」というと、誰にも頼らずに一人で生きられるようになることだと考える人が多いのではないかと思います。私もそうでした。
しかし真実はその逆で、「多くの人に依存する=自立」ということができるようなんです。
これは「生きる技法」という本で紹介されていた考え方ですが、これを読んで今までの考え方が180度変わりました。この本の中から、私が感銘を受けた話、言葉をご紹介したいと思います。
「自立しなければいけない」と誤った方向へ自分を追い込んでしまっている人に、特に読んでもらいたい本です。少なからず気持ちが楽になります。
著者の安冨歩さんについて
1963年生まれで、東京大学東洋文化研究所の教授をされています。
母親や配偶者との関係に長年悩み苦しむ生活を続けてきた中で、「自立とは依存することだ」という考えと出遭い、長年の苦しみから脱することができたそうです。
自立した人とは?
「自立とは、多くの人に依存することである」
この原理を発見したのは中村尚司さんという経済学者の方です。
小学生の頃から自立について考え、この原理に辿り着くまでに60年かかったそうです。
安冨さんは、この原理の発見を「経済学の歴史上、最大の発見である」と考えています。
逆に依存できる相手が少なくなるほど、自立しているという状態から遠くなるということです。もし依存できる人が一人しかおらず、その人から「〇〇をしてくれないと助けてやらない」などと難しいことを要求されても、他に頼れる人=依存できる人がいないわけですから、相手の言うことを聞かざるをえなくなります。それを安冨さんは「従属」と定義し、「従属とは依存できないことだ」と説いています。
もしあなたが、人に助けてもらうことはいけないことであり、自分でなんとかしなきゃ、と思って抱え込んでしまう人であるなら、その考えこそが、あなたを人に従属させている原因だとご理解ください。もちろん、何でもかんでも人に頼ろうとして、人が助けてくれないと、当り散らすような人は、未熟なだけです。
しかし、自分が困っているときに、助けを求めることができないこともまた、未熟さの反映なのです。*
長年配偶者によるモラル・ハラスメントに耐え、従属してきた安冨さんは、上記のことに気づき、離婚を決意することができたそうです。
自立した人というのは、自分で何でもする人ではなく、自分が困ったらいつでも誰かに助けてもらえる人であり、そういった関係性のマネジメントに長けている人のことだ、ということに気づきました。*
自立には友だちが必要
親からの自立を果たすためには、なによりも親以外の人への依存を獲得せねばなりません。それも、自分より上に立つ人に依存するのではなく、自分と対等に付き合ってくれる人、つまり「友だち」を作ることが、何よりも大切です。*
友だちがいない場合はどうすればいいのか? ということに関しては言及されていませんので、そういう方は別途そういった本をお読みになるといいと思います。
ただ、
- 誰とでも仲良くしようとすると、誰とも仲良くなれない
- 対立を恐れてはいけない
- 嫌われるのを恐れると、誰にも愛されない
- 友だちは、友だちに紹介してもらえばよい*
など、良い友だち作りのヒントになることがいくつも書かれています。
自愛と自己愛の違い
愛は自愛から発し、執着は自己愛から生じる*
自分を好き=ナルシスト、ナルシスト=気持ち悪い、といったイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
それはナルシシズムと呼ばれるもので、「自己愛」と同じです。
しかし「自愛」というものは、「自己愛」と言葉は似ていますが、意味がまったく違います。
「自愛」①自らその身を大切にすること。
「自己愛」①自己を愛し、自己を性的対象とすること。②転じて、自己陶酔。うぬぼれ。*
上記のように、「自己愛」はあまり良いものではなさそうですよね。
この「自己愛」は自己嫌悪から生まれるものなのだそうです。
自己愛ではなく自愛ができるようになれば、人を愛することができるようになり、本当の友だちを作ることも可能になる、と説かれています。
非常に簡単にまとめると、自分を嫌うのをやめ、自分を好きになり、自分を大切にすれば、不安から解放され、生きるのが楽になる……ということです。
最後に
他にも「お金」「自由」「夢」「自己嫌悪」「成長」をテーマに、私が今まで気づかなかったことが、命題に沿ってわかりやすく記述されています。
この本に書かれていることを、小学校などの授業で子どもに教えた方がいいのではないかと思いました。
いじめなどで自殺してしまう子の中には、助けを求めること=悪いこと、弱虫のすること、などと誤った考えを持っているために、自分を追い詰め自殺してしまう子が多いような気がするので……。
ここまでお読みいただきありがとうございました!
*引用元:「生きる技法」安冨歩著